大学卒業間近。気まぐれからソングライティング・コンテストに出場し、ニューヨークへの豪華週末旅行のチケットを手にしたヴィヴィアン。そして卒業後、親友のソフィーとニューヨークへ移り住むことを決意したとき、彼女の本当の「冒険」の物語が始まる。レストランでの初めての仕事、トラウマ的存在である元カレの店への突然の来訪、なじみ客もでき、ウェイトレスの仕事のノリも完璧につかんだころ、持ち上がるあこがれの企業VH1への就職の話…。
恋の話も盛りだくさんだ。ルームメートのソフィーにボーイフレンドができてしまい、急に広く感じるようになったアパートで開いた「ポエトリー・リーディング」の会、そこで出会ったちょっとキュートなパトリック! たちまち恋に落ちたヴィヴィアンだが、彼の正体は…?
なにより英語が驚くほど平易なのだ(英語で読んでいることをほとんど忘れる)。21世紀を迎えたばかり―― そして「世界を永遠に変えた」と言われるあの出来事の直後―― のニューヨークの風俗のライブ感、希望と不安が錯綜した若いニューヨーカーたちの心象が、英語のノン・ネイティブスピーカーの胸にもするすると入ってくる。プロットや人物の書き込みに浅さはあるが、どんどん先を急がせる、ページをめくらせ続けるグルーブ感は、著者のテキストの魅力の1つだろう。
洋書の初めての完読体験、しかもできればかなり楽しい体験を探している読者にうってつけの、ポップでキュートな1冊だ。(石井節子)

